1.微細形態学的検討:慢性低酸素下(380torr・12週)に暴露されたラット勁動脈小体の血管系は著しく拡張し両生類の勁動脈小体と極めて類似した形態を示した。化学受容細胞(glomus cell)の微細形態については以下の様な新知見が確認された。(1)Glomus cellは支持細胞に取り囲まれることが少なく、周囲の結合組織と直接接している。(2)Glomus cellは細長い細胞質突起を血管周囲域へ伸ばしている。(3)Glomus cellは血管内皮細胞や周皮細胞と直接接触している。これらの微細形態学的特徴もまた両生類のglomus cellの特徴を示した。 2.連続厚切り切片による三次元構築:同試料より得た連続厚切り切片を超高圧電子顕微鏡(400KV)観察し、上記の特徴を立体的に把握した。特に、上記の特徴(1)はglomus cellの肥大の割合が支持細胞それに比べ大きいことに由来していることが確かめられた。哺乳動物に比べ動脈血酸素分圧(PO2)の低い両生類のglomus cellに類似した所見が得られたことは、これらの特徴が慢性低酸素状態に適応した結果であることを示すと共に、血液中からの酸素摂取ならびにカテコールアミンの血中への放出を助長するに適した微細形態であると考えられる。 3.免疫組織化学的検討:慢性低酸素暴露ラットの頸動脈小体および気管では、前者ではSP、CGRP、後者ではVIP、NPY免疫陽性線維の増加が認められた。これらの増加は慢性低酸素下に順応した結果を示すものであり、過呼吸等は特に頸動脈小体における化学受容反射の求心性要素の増加に由来するものと考えられる。 4.細胞内セカンドメッセンジャー投与による生理学的検討:ペプチド性神経支配増加の原因として、1)軸索輸送の促進、2)神経突起の伸張、3)ペブチド合成能の促進等が推測されるが、これらを確認するために、頸動脈小体の未固定切片における神経線維の軸索輸送について、サイクリックAMP投与等の実験を目下進行中である。
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