研究概要 |
昨年度cytochrome C oxidase活性の電子顕微鏡レベルの検出に新手法である凍結超薄切片酵素組織化学の手法が再現性の面から見て有効な手法であることを示した。これは切片上で生物活性を可視化する場合、組織化学反応液の切片内への浸透が問題となるからであった。再現性のある結果を得るためには酵素活性は超薄切片上で行うことが最良と考えられる。この時、超薄切片としては本法の凍結超薄切片か、または樹脂包埋超薄切片が候補となる。しかしながら樹脂超薄切片では、その試料は脱水(有機溶剤処理)、樹脂浸透(通常モノマーには細胞毒性がある)、重合などの処理を受けている。これらの処理が細胞内酵素にどのような影響を与えるかを精査したところ、可溶性蛋白であるacid phosphataseも、膜結合蛋白であるalkaline phosphataseもともに本来の位置から流出、拡散してしまうことを明らかにした(日本組織細胞化学会編、組織細胞化学1994)。 以上のことより、正確な酵素の位置を再現性高く検出するには凍結超薄切片酵素組織化学の手法が現時点では最良と考えられた。 脱水、包埋過程は可視化した酵素反応産物を可溶化することが知られている。とくにこれはアゾ色素の電顕応用を拒んできた一因でもある。アゾ色素の電顕応用の前段階として蛋白分解酵素の光学顕微鏡レベルの検出を行った(Acta Histochem.Cytochem.27:245-249,1994)。蛋白分解酵素活性の電顕的検出が可能となれば細胞内での蛋白質のプロセシング等に有意義なデータを提供するものと思われるが、現時点では未だ充分な結果は得られていない。その原因を今後検討したい。
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