凍結超薄切片法では、生物試料に脱水、包埋操作を加えることなく電子顕微鏡で観察可能な超薄切片を得ることができる。この特徴を酵素組織化学に応用することで従来の方法では得られない知見が得られるか検討を行った。検討の結果、新手法である凍結超薄切片法では従来法より再現性が勝っていることが実証できた。 1.超薄切片上で酵素活性を検出する利点 凍結超薄切片酵素組織化学の手法を確立後、その結果を従来の電顕酵素組織化学での結果と比較した。従来法では40μmという厚さをもつ浸漬用切片を組織化学反応液に浸漬するため、切片厚全体に均等に組織化学反応が起こらず、これを電顕切片として観察すれば浸透不良による誤った結果が得られる可能性があったが、凍結超薄切片ではこのような浸透不良はなく、極めて安定した結果が得られることが明らかとなった。とくにこのことはcytochrome Coxidase活性検出実験で明瞭に表れた。 2.脱水、包埋操作を経ない利点 超薄切片を用いて酵素組織化学を行うことが結果の再現性を向上することを明らかにしたが、免疫電顕で多用されるpost-embedding法との比較も行った。可溶性蛋白としてacid phosphatase、膜結合性蛋白としてalkaline phosphataseを指標に、グルタールアルデヒド固定、パラフォルムアルデヒド固定後、試料に脱水(エタノールとアセトン)操作後活性を検出した。両酵素とも脱水操作により明らかな局在の変位、流出が認められ、acid phosphataseにいたってはパラフォルムアルデヒド固定後のエタノール脱水で酵素蛋白は完全に組織から流出していた。 以上の結果より、現時点では酵素活性の局在を電子顕微鏡で観察するには凍結超薄切片酵素組織化学の手法が最も信頼できる方法であると結論された。
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