中枢神経系の発生、神経細胞機能発現のための環境提供、さらに中枢神経系の情報処理過への積極的関与など重要な役割を果たすことが明らかになってきた。このような星状グリア細胞の機能を理解するために必要な形態情報、特に神経細胞との三次元的な関係を知るために必要な表面体積比、組織内密度などの定量的な情報を得ることを目的として本研究を計画した。研究方法としては星状グリア細胞の特殊染色法を用い、光学顕微鏡による全体像観察と超高圧電子顕微鏡による厚い試料の三次元定量解析法を用いた。その結果を要約すると、1)灰白質内での星状グリア細胞突起は厚さ50nm以下の極めて薄いシート状突起として神経細胞突起間に拡がっているので光学顕微鏡では定量的解析が不可能であることが分かった。2)神経細胞樹状突起スパインの定量解析のために開発した三次元定量解析プログラムは、偏平で極めて薄い星状グリア細胞突起では二値化が困難であるため適用がむつかしいことが分かった。3)この問題を解決するためにコンピュータートモグラフィー(CT)解析を行うこととした。この目的のために超高圧電子顕微鏡の対物レンズを前磁場の弱いタイプに改良し、試料面へ平光照射できるものとした。また試料台を±60°連続傾斜可能なものとした。この装置を用い撮影した画像をコンピューター(シルコングラフィクス社オニクス、リアリティエンジン2)処理によりCT解析を行った。その結果3μm切片について星状グリア細胞突起の一部について三次元画像化に成功した。現在生理機能の理解に必要な星状グリア細胞の表面積、体積の測定のための条件設定実験を行っている。
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