新生児ラット(生後0-14日)腎臓の組織標本を作製し、尿細管の分化・発達の日変化を調べた。生後1日以内では、皮質部(主に近位尿細管)が断面積の80%を占め、髄質部(主に集合管)の発達は遅れていた。その後、髄質部の割合が増加し、生後7-14日で、ほぼ同面積になった。従って、腎集合管は、出生後から生後7日目にかけて急速に発達することがわかった。第二に、髄質部集合管の組織像を検討した。生後2日目の髄質部集合管には合流部が見られ、尿の生成・排泄機能が働いていると推定された。新生児ラット腎は、成人ラット腎に比べ、間質部の割合が大きかった。第三に、抗利尿ホルモンV2受容体の蛍光抗体を用い、新生児ラット腎集合管でのV2受容体の発現を調べた。コラゲナーゼ処理直後の単離集合管には、強い蛍光が見られたが、培養1日後の細胞では蛍光量が減少し、膜表面からのV2受容体蛋白が脱落したと思われた。以上の結果を総合すると、出生後早期(0-7日)に腎集合管の基本構造が完成し、イオン輸送能及びその調節系(抗利尿ホルモン受容体)を持つことがわかった。 次ぎに、生後0-3日のラット腎集合管を用い、どのようなイオンチャネル蛋白が発現しているかを調べた。cell-attached patch及びinside-out patchで、K選択性チャネル(約150pS)を見つけた。このチャネルの活性は、静止膜電位及び高K溶液で脱分極させた場合も小さく、開確率(p)はp<0.01であった。開確率は、細胞内Caが増加するような条件でのみ活性が増加した。 平成6年度は、ATP受容体及びCaチャネルの発現と尿細管における分布を調べる予定である。
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