1.収縮・弛緩の力学的分析。ラツトまたはウサギ骨格筋細胞から単離した脱鞘筋標本を作成し、ケージドATP光分解法を用いたATP遊離によつて、その収縮および弛緩を引き起こした。この過渡反応において、500ヘルツ微小正弦波筋長振動に対する張力応答振動を追跡した。応答は、位相同期の成分と位相直交の成分とに分けた。時間分解能は約1ミリ秒。この実験はおもに大分医大の実験室において実施した。 2.分子形態学的な分析。つくば高エネルギー物理学研究所の放射光実験施設にて、X線赤道反射の変化経過を5ミリ秒分解で追跡した。マシンタイムは48時間が2回。不充分ながらも、500ヘルツ正弦波応答が同時に追跡することができた。回折パターン記録には、従来の位置検出型光子カウンタによる方法のみならず、X線テレビを用いる方法も試みることができた。 3.上記ふたつの実験の結果を統合して、以下の2点を結論した。(1)カルシウム存在下の収縮であつてもそれに必ず伴う初期弛緩は、真の弛緩ではなく特殊な「収縮前状態」である。(2)カルシウム不在下であつてもしばしば一過性収縮が起こる原因は、弛緩状態の前に上記の前状態が現れるためである。 4.これからの発展。収縮前状態の仮説を裏付けるために、ATP光遊離収縮を以下の2点で修飾し、今回と同じく力学と形態学の実験でそれを分析する。(1)中間濃度カルシウムによる収縮。(2)ADP存在下の収縮と弛緩。
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