研究概要 |
マウス(Balb/c)の頸骨および大腿骨より骨髄細胞を採取し、pokeweed mitogen刺激後のマウス脾臓細胞培養上清(PWM-SCM)存在下で長期培養すると、2-4週間後にアルシアンブルーに染色されたマスト細胞(bone marrow-derived mast cells,以下BMMCと略す)が得られた。これらのBMMCにパッチクランプ法を適用しホールセル電流を測定すると、約1/3の細胞では殆ど電流が見られなかったが、14%で内向き整流性電流、24%で外向き整流性電流、22%で内向きおよび外向きの電流が記録された。内向き整流性電流は、1mMBaでブロックされ、逆転電位が細胞外K濃度に依存するため、K電流であると結論された。次に、外向き整流性電流は、C1チャネルブロッカーのDIDSでブロックされること、細胞外液のC1を不透過性のisethionateで置換すると著明に減少すること、内外のC1濃度比を下げていくと逆転電位が+側にシフトすることなどから、主にC1電流によると推測された。この他、内向きおよび外向きの電流を通過する約30pSおよび150-280pSのコンダクタンスの単一チャネル電流がホールセルクランプ下で観察された。BMMCの静止膜電位は、殆ど電流の見られなかった細胞では0mVに近く、多少とも内向き整流性電流が見られた場合は、入力抵抗が減少するほど過分極側に移動し、外液K濃度を増加させるほど脱分極した。一方、高K液中でK電流の逆転電位を0mVにした場合でも膜電位は-40〜0mVであったため、内向き整流性Kチャネルのみならず外向き整流性C1チャネル活性もBMMCの膜電位調節に寄与すると考えられた。以上の結果から、BMMCは電気生理学的性質の異なるsubpopulationから構成されることが明らかになり、表現型の異なるマスト細胞のチャネル発現の多様性に関与すると考えられた。
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