研究概要 |
マウス(Balb/c)の脛骨および大腿骨より採取した骨髄細胞をpokeweed mitogenで刺激したマウス脾細胞培養上清(PWM-SCM)存在下で4週間以上培養し分化させたマスト細胞(bone marrow-derived mast cells;BMMC)の膜電流をパッチクランプ法を用いて測定した。その結果、BMMCが粘膜型マスト細胞の生化学的性質を持つことからの予測に反して、電気生理学的には不均一な集団であったことは今後BMMCの分化を研究していくうえで重要な発見である。私達は室温で記録されたチャネルの種類によってBMMCを試験的に次の4タイプに分類した。Type 1:殆どチャネル活性が見られないもの(40%)。Type2:内向き整流性Kチャネルが優位に存在するもの(14%)。Type3:外向き整流性C1チャネルが優位に存在するもの(24%)。Type4:内向き・外向き両方向の電流が見られるもの(22%)(Kuno et al.,印刷中)。非選択的陽イオン透過性チャネルや大きなコンダクタンスの陰イオン透過性チャネルも時に観察された。また、記録用chamberの温度を37度まで上昇させたり細胞内Ca濃度を上昇させると、Type1のBMMCでも外向き電流が活性化されることが明らかになるなど、多様なチャネル活性はBMMCの細胞内代謝条件を反映していることが示唆された(1995年3月、第72回生理学会大会で発表予定)。現在、実験条件や様々な物質のチャネル活性に対する影響や、培養液にチャネルブロッカーを添加したりイオン組成を変えた場合のBMMCの出現・増殖・結合組織型への分化に対する影響を検討している。今後、BMMCの個々のチャネル活性が分化過程でどのように発現・制御されているのかを細胞の機能との関連のなかで追求していきたい。
|