初年度の研究で私は、ウサギ接合尿細管の管腔側膜に膜張力依存性の非選択性陽イオンチャネルが存在し、このチャネルは張力負荷時cAMPの膜透過性誘導体CPT-cAMPによって活性が増大し、張力をかけないと活性が上がらないことを報告した。cAMPはCa排泄を調節する副甲状腺ホルモン(PTH)の2次メッセンジャーであることから、このチャネルがCa排泄の調節の主役ではないかと考え、本年度は生理的条件下で働いているかどうかを検討した。 1)接合尿細管を管腔側にのみCaを加えた条件で単離潅流してfura2によって細胞内Ca濃度([Ca]_i)を測定し、このときの[Ca]_iの変化を管腔側からのCa流入の指標とした。 2)1)のように測定した[Ca]_iは管腔内圧を0.2KPaから生理的な管腔内圧に近い1.2KPaに上げると約40nM上昇し、PTH存在下で同様に管腔内圧を上げると[Ca]_iの上昇分は約100nMに増加した。管腔内圧依存性のCa流入の増加はCPT-cAMPでも促進された。 3)管腔内圧が1.2KPaの場合PTHを投与すると、約30nMの[Ca]_i上昇が見られたが、0.2KPaでは[Ca]_iの明らかな上昇は見られなかった。 4)圧依存性[Ca]_iの上昇は、10nM nicardipineを投与しても全く抑制できなかった。 以上の結果は初年度報告した非選択性陽イオンチャネルの性質と完全に一致し、このチャネルが生理的にも原尿の流れで活性化され、PTHでその活性が調節されることを示した。
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