平成5年度、6年度の研究で私は、ウサギ接合尿細管を単離灌流して細胞内Ca濃度([Ca]_i)をfura 2を用いて測定し、副甲状腺ホルモン(PTH)の接合尿細管Ca再吸収に対する促進作用が、灌流圧に依存することを突き止めた。また、接合尿細管管腔側膜に膜張力依存性のCa透過型非選択性陽イオンチャネルを発見し、このチャネルの活性がPTHの2次メッセンジャーであるcAMPの膜透過性誘導体で促進されることから、このチャネルがPTHによるCa輸送調節に重要な役割をはたしていることを報告した。しかし、接合尿細管管腔側膜にジヒドロピリジン系Caチャネルブロッカーで阻害されるCaチャネルの存在が報告され、平成7年度は、ジヒドロピリジン感受性Caチャネルと張力依存性チャネルが各々どの程度、接合尿細管のPTH依存性Ca輸送に関与するのか、比較検討した。 50nMPTHを投与して上昇した[Ca]_iの増加分(Δ[Ca]_i)を、各チャネルブロッカーがどの程度抑制するかを調べると、膜張力依存性陽イオンチャネルブロッカーであるGdを管腔内に投与すると、0.1μMから濃度依存性に[Ca]_iを減少させ、その減少分は10μMでΔ[Ca]_iの90±21%であった。しかし、ジヒドロピリジン系Caチャネルブロッカーであるnifedipineとbenidipineでは[Ca]_i減少はほとんどなく、100μM投与してもそれぞれ、24±7%、30±12%減少したにすぎなかった。これらの結果は、接合尿細管管腔側膜のPTH依存性Ca再吸収は、主に膜張力依存性陽イオンチャネルを経由することを示している。 本研究において、接合尿細管のPTH依存性Ca再吸収が主に膜張力依存性陽イオンチャネルを経由し、PTHだけでなく原尿の流れでも調節されていることが分かった。この機序により生体は、尿の排泄が増加した場合にもCaの再吸収能を保ち、不足しがちなCaを体内に維持することができると考えられる。
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