蛙骨格筋単一筋繊維に高分子dextranと結合したfura-2(fura dextran)を注入し、筋細胞からの蛍光と収縮張力を同時に測定した。単一筋繊維の細胞膜をβ-escinで処理し、細胞質からの種々のサイズの分子の漏出を調べた。(1)細胞質のATP(分子量約600)が枯渇するすることによるrigor張力、(2)分子量約1万のfura dextranが漏出することによる蛍光強度の減少、(3)細胞質から細胞外液中に漏出した蛋白(分子量1万4千-8万)の電気泳動による検出、の3つの方法により、細胞膜の透過性を評価した。その結果、β-escin処理した細胞膜は、ATPなどの低分子をよく通すが、分子量1万のfura dextranはゆっくりとしか漏出せず、またほとんどの蛋白は細胞内に維持されることがわかった。したがって、β-escin処理筋の細胞外Ca^<2+>濃度を変えて、fura dextran蛍光を測定することにより、蛍光信号を較正することが可能だと思われた。 細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_i)と収縮張力の関係を生筋で調べるために、fura dextranを注入した蛙骨格筋単一筋繊維からの蛍光信号と収縮張力を細胞外K^+濃度を種々に変えて(10-100mM)測定した。β-escin処理筋で得られた較正パラメータをもちいて蛍光信号から[Ca^<2+>]_iを求め、収縮張力を[Ca^<2+>]_iに対してプロットした。データをHi 11の式であてはめたところ、N(slope factor)=3.0、pCa_<50%>(50%の張力を発生するpCa)=5.8でもっともよいフィットが得られた。この結果より、[Ca^<2+>]_i約0.6μMで発生わずかに発生しはじめ、約4μMで最大張力に達することが示唆された。
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