本年度の研究計画の各項目ごとに研究実績の概要を記す。 I.FOKラット系統のさらなる品質向上、この度FOKラットの無菌的帝王切を行なって子孫を得、微生物検査の結果、SPF動物化されていることが確認された。FOKラットはSPF領域内の一部に限局して飼育している。SPF領域内に簡易人工気象室を造り、ブリーダーの選抜を可能にすることによって、core stockを確保できた。経済面ではきわめて厳しい飼育事情があるが、他大学の要請に応じて清潔で高品質のラットを発送できるようになった。 II.ハイパーサーミアの影響 40℃を越えるようなハイパーサーミア時には普通のラットも唾液を分泌して体温上昇を一定限度内に抑制しようとするが、唾液量は少なく、30分〜2時間で分泌は停止する。しかしFOKラットの唾液腺は5時間以上にわたって唾液を分泌する。何らかの未知のメカニズムの存在があるのだろう。FOKラットのかっ色脂肪組織は40℃のハイパーサーミア時に、他のラットよりも熱産生が少なかった。ハイパーサーミア時の唾液組成、および脳虚血の実験は現在進行中であるが、結果はいまだ出ていない。 III.先天的にFOKラットにおこっている変化 33-36.5℃の温和な温かさの中でも、FOKラットは体温が低く、温熱性唾液分泌のほかにも、体温上昇軽減に有利なメカニズムの存在を示唆した。FOKラットは高温耐性ラットであるが、同時に寒冷耐性である可能性が出てきた。
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