研究概要 |
脱水時には血液量減少に伴う心臓への静脈還流低下によって動脈血圧(MAP)が低下することが知られているが、実際測定すると上昇した。このことは脱水時の血圧調節に、従来報告されている血圧反射に加えて髄液Na濃度(〔Na〕csf)の上昇が関与している可能性があり、それを確かめるために以下の実験をおこなった。 体重の6-7%に相当する脱水を負荷したラットをUrethaneで麻酔し、脳室内に低張性人工髄液(260mOsm/kgH2O)を5mml/min10分間持続注入し、その間の〔Na〕csfとMAPを連続測定した。その結果、脱水によって〔Na〕pは145±1meq/kgH2O(mean±SE,n=12)から153±1meq/kgH2O(n=10)に、〔Na〕csfは141±1meq/kgH2Oから148±1meq/kgH2Oにヘマトクリット値は46.3±0.9%から49.9±0.9%(以上p<0.001)にMAPは86±3mmHgから97±4mmHgにそれぞれ上昇した(p<0.05)。脱水ラットに低張性人工髄液を注入すると注入開始後、〔Na〕csfとMPAは直線的に下降し、注入終了時には注入前に比べ-8±1meq/kgH2Oと-9±1mmHgにそれぞれ有意(p<0.001)に下降し、以後注入前値に復帰傾向を示した。注入前、注入中、回復時の全経過で〔Na〕csf変化(△〔Na〕csf)とMAP変化(△MAP)は高い正相関を示した(△MAP=1.03△〔Na〕csf+0.25,r=0.96,p<0.001)。以上の結果は脱水時とその回復時には〔Na〕csfは大きく変化するが、それは低血液量に起因する低血圧を防止するするための重要な入力信号となっていることが明らかになった。
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