平成5年度:脱水時脳室内浸透圧上昇の血圧維持における役割を明らかにする目的で、温熱脱水を負荷したラットの側脳室内に低張性人工髄液を注入し、髄液Na濃度(〔Na〕csf)を脱水前値に復帰させた場合の〔Na〕csfと平均動脈血圧(MAP)を測定した。さらに非脱水ラットに低張性、高張性人工髄液を注入した際の〔Na〕csf変化(△〔Na〕csf)とMAP変化(△MAP)の関係を脱水時と比較した。その結果、脱水ラットでは△MAP/△〔Na〕csfは、非脱水ラットに比べ2倍に亢進した。以上の結果から脱水後の〔Na〕csfの上昇は脳内浸透圧受容器を介して血圧を維持するための重要な入力信号となっていることが示唆された。 平成6年度:脱水時の〔Na〕csf上昇による血圧維持機構をより詳細に検討する目的で、脱水負荷したラットの側脳室内に低張性人工髄液を注入した際の△MAP、および心拍出量変化(△CO)、総末梢血管コンダクタンス(△TVC)を連続測定し、△〔Na〕csfとの関係を解析した。血圧反射の影響を避けるために高圧系圧受容器の除神経を行った。脱水後血液量が減少したにもかかわらず、非脱水ラットに比べ血圧は高いレベルに維持された。この脱水後の動脈圧上昇は、COの低下を上回るTVCの減少によって引き起こされた。次に、側脳室内に低張性人工髄液を注入すると、側脳室内の〔Na〕csfの低下に比例してMAP、COは低下し、TVCは逆に上昇した。 以上の結果から、脱水時の髄液Na濃度の増加は末梢血管を収縮させ、また心拍出量の低下を防ぐことによって、脱水時の低血液量に起因する血圧低下を防止するための重要な入力信号であることが示唆された。
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