研究概要 |
運動生貧血発症機構解明のための基礎的検討を行い、次の結果を得た。 1.本学女子運動鍛練者44名(主に陸上部とバスケットボール部)の血液性状を調べたところ、ヘモグロビン濃度が13g/dl以下で、正球性正色素性貧血の選手が約30%いた。 2.インターバルトレーニングや3000m走などの激しい運動後には、血中の乳酸に加えて遊離脂肪酸濃度の著しい上昇が認められた。しかし、脂肪酸の上昇度は1.5〜9.0倍と個体差が大きく、また同一被験者であっても運動する日によって上昇度が異なるため、どのような条件で運動すると脂肪酸増加が高いのかを、今後検討しなければならない。 3.運動後に増加した主な血中遊離脂肪酸は、パルミチン酸とオレイン酸およびリノール酸であった。興味あることに、平常時には血中にほとんど認められないパルミトレイン酸が8〜10倍増加した。この脂肪酸の生理的役割は、今後追求しなければならない。 4.上記(2)の運動後、血中ハプトグロビン濃度が5〜45%低下したことから、運動中に溶血の生じていることが示唆された。また、運動前でもハプトグロビン濃度が正常の約半分しかない選手がおり、日常のトレーニングでも溶血の生じていることが窺われた。 5.通常のトレーニングを行なった日の24時間尿中のカテコールアミン量(Adrenalin,Noradrenalin,Dopamin)、および尿素量は運動非鍛練者のおよそ4倍であった。 以上の結果より、ホルモン(カテコールアミン)感受性リパーゼによって切りだされた脂肪酸が赤血球の破壊を亢進させている可能性があり、次年度は運動生貧血発症因子としての血中遊離脂肪酸の関与を、in vitroでの実験をも交えながら明らかにしたい。
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