研究概要 |
本研究の目的は、ラットを用い中等度の持続的な運動を行った際の動脈圧調節系の修飾機構を検討するものである。 平成5年度は、ラットを用いてトレッドミル運動を行わせ、その間の動脈圧、中心静脈圧、心電図、心拍数、腹腔内温、および腎交感神経活動の連続測定法を開発した。 平成6年度は、その方法を用い、ラットにトレッドミル運動(20m/min,30分間)を行わせ、循環系、エネルギー代謝系、および腎交感神経活動の動態について検討した。 ウィスター系のラット(290g、n=10)を用いた。実験プロトコールは、1時間のホームケージでの安静、1時間のトレッドミルレーン上での安静、トレッドミルでの30分間の運動、1時間のトレッドミルレーン上での回復、1時間のホームケージでの回復期の5期よりなる。 結果、ラットのトレッドミル運動(20m/min)の運動は、運動後に一過性の動脈圧低下(約10mmHg)を引き起こすことが明らかになった。また、エネルギー産生に利用される糖質・脂質の利用比を示す呼吸商が、運動前の0.82から運動後0.72に有意に低下した。これは、運動後にはエネルギー産生に用いる脂質が優先的に利用されること意味する。この呼吸商の低下は、運動後2時間持続した。一方、腎交感神経活動も運動終了後2時間、約30%の活動が抑制された。 以上の結果より、ダイナミックな運動は、交感神経系を運動後に中枢性に抑制させると考えられる。この中枢性の交感神経系の低下は、圧受容器反射による動脈圧調節系を修飾し、一過性の動脈圧低下を引き起こしていると推察される。また、運動後の交感神経活動の持続的な低下は、運動後のエネルギー産生に用いる脂質の動員増加に関与していると考えられる。何故、運動後に交感神経活動の抑制が生じるかについては今後検討したい。
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