研究概要 |
血管平滑筋の膜電位を過分極させて弛緩を生ずる内皮田来過分極因子(EDHF)が探求されている。Kチャンネルが開くと膜電位が過分極して電位依存性L型Caチャンネルが脱活性化され、細胞内Caイオン濃度([Ca^<2+>]_i)が低下し、血管が拡張するというのが一般的な理解であるが、もっと踏み込んだ検討が必要と考えられた。 Fura-2を取り込ませたイヌおよびブタ左冠動脈リング標本で、Fura-2の蛍光比を張力とともに測定し、また膜電位やcAMP,cGMP,IP_3と張力の同時測定も行った。 比較的特異的なKチャンネル開口薬(KCO)のクロマカリムやその活性左旋体のレブクロマカリムはその過分極作用でアゴニスト(U46619,FT-1)のCa流入と収縮作用を強力に抑制する.このCa流入はもっぱら電位依存性L型Caチャンネルを介するものある。さらに、KCOは外液無Caの状態で、U46619によるIP_3の生成とそれに伴う[Ca^<2+>]_iと収縮を抑制した。KCOはその細胞膜過分極作用により、アゴニスト収縮に関与するホスホリパーゼCの活性化を[Ca^<2+>]_i低下作用とは独立に抑制する。続いて、血管平滑筋の[Ca^<2+>]_i対発生張力の関係を検討すると、KCOの過分極作用や外液のKCl濃度減少の再分極作用は、収縮蛋白Ca感受性を減弱し、それらの膜電位変化対Ca感受性減弱効果関係は同一の曲線となった。 収縮機構やKCOに見られる細胞保護機構と膜電位の変化とを結び付けるものは、細胞膜に存在する酵素活性が膜電位を感受して変化していると考えられる。従来、膜電位の影響下にある機能タンパク質としてはもっぱら電位依存性チャンネルが考えられていたが、細胞膜に存在する酵素活性が膜電位の変化により調節されているというきわめて新しい概念が現在視野に入ってきたことになる。今後どの様な膜酵素活性が関与するのかの同定をおこないたい。
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