血管平滑筋の膜電位を過分極させ弛緩を生ずる種々の生体物質と治療薬が関心を呼んでいる。Kチャネルが開くと膜電位が過分極して、電位依存性L型Caチャネルが脱活性化され、細胞内Caイオン濃度(〔Ca^<2+>〕i)が低下し、血管平滑筋が弛緩するというのが一般的な理解であるが、もっと踏み込んだ検討が必要と考えられた。イヌ冠動脈において、Kチャネル開口薬(KCO)や細胞外のKCl濃度を変化させて、膜電位を変化させて、〔Ca^<2+>〕iと収縮の関係を膜電位も測定し検討した。 トロンボキサンA_2受容体を刺激して、ホスホリパーゼC活性を高める作用をKCOは抑制し、過分極は、膜酵素活性を抑制する。 ホルボールエステルはCa感受性を高めて、きわめて低い〔Ca^<2+>〕iでも強力な収縮を生じるが、レブクロマカリムで過分極させると、ホルポールエステルの収縮を抑制した。この抑制作用はグリベンクラミドや20mM KClの部分脱分極で消失した。逆に90mM KClで脱分極すると、〔Ca^<2+>〕iは変化せずにホルボールエステルの収縮を増強した。 90mM KClで脱分極後、5mM KClにして再分極させて弛緩させると、細胞外無Ca液で弛緩させた時とほぼ同じ時間経過で〔Ca^<2+>〕iが減少する。にもかかわらず、前者は後者よりも速く弛緩する。後者の弛緩は〔Ca^<2+>〕iと同じ時間経過で弛緩することからも、再分極あるいは過分極は、冠動脈平滑筋のCa感受性を抑制すると考えられる。 我々の提唱している「過分極弛緩速関」という現象が、タンパクリン酸化酵素Cが関与する機構においても、生じていることを示すものである。新しい酵素機能調節が提示できたものと考える。
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