本研究では重要な生理作用を持つ神経特異遺伝子NPY及びEnkephalinsの生合成機能のうち、転写レベルの制御とその遺伝子転写因子の同定、及びこれらの因子に対する神経作動薬の作用を分子生化学的手法を用いて解明する。 (1)上記の目的に対し、クローンした2つのペプチド前駆体遺伝とプロモーター欠失ミュータントCATレポーター遺伝子を用いて、培養神経細胞が神経活動を行った時に生じる神経特異遺伝子の発現変化が転写レベルであることを証明した。 (2)さらに、神経特異遺伝子のどの塩基配列が、神経活動に伴う細胞内セカンドメッセンジャーの変化を感受し転写調節を行うかを解析した(膜脱分極反応エレメント、NGF反応神経分化エレメント、及び糖質コルチコイド反応エレメントを遺伝子プロモーター上にほぼ同定した)。 (3)同定した反応エレメントに結合する核内転写因子の発見を行い、予想よりも多くの転写因子が結合することを見いだした。これらの因子の結合活性は薬物、ホルモンや分化シグナルの調節を受けることを明らかにした。 (4)現在、これらの因子の精製、クローニングを行っているがそのうちの1つ、NDF1はクローニングしており、神経の分化に重要な因子と考えられるデータが集積しつつある。 (5)さらに今後、これにらの因子の薬物や分化シグナルでの調節を明らかにし、これらの新しい転写調節因子が神経分化や神経作動薬の作用点であることを分子レベルで解明できると考えている。
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