研究概要 |
ニトロソシステイン(NO-Cys)はラット胃平滑筋細胞、ウサギ胃細胞、回腸細胞、門脈細胞において著明なアパミン感受性膜過分極を発生する。そこでこのアパミン感受性過分極に関与するイオンチャネルを同定するため、ラット胃平滑筋細胞および単離化の簡単なウサギ回腸平滑筋細胞を常法通り酵素処理により単離し、NO-Cysで活性化される電流の記録を試みた。通常のホールセル電位固定法では電位依存性電流(Ca,K電流)は記録できた。約10%の細胞で(保持電位0mV)10-20pAの外向き電流が記録できたが、大部分の細胞でNO-Cys(100uM)により誘発される外向き電流は検出出来なかった。細胞内から内因性物質が消失するのを防ぐため、ニスタチンによるホールセル電位固定法でNO-Cysの効果を検討したが、改善は認められなかった。次に酵素処理がなんらかの原因でNO-Cysに対する反応を減弱させる可能性を検討するため、組織標本(ウサギ回腸輪走筋)を用いてNO-Cysで誘発される過分極に対するコラゲナーゼ(0.1-0.3%)、トリプシン(0.1%)の影響を微小電極法により調べた。しかし、両酵素ともNO-Cysで誘発された過分極を抑制しなかった。 脱分極刺激により惹起される電位依存性K電流に対して、NO-Cysは増強作用を持たなかった。また細胞内Ca貯蔵部位からのCa遊離に関係ある電流振動は確実に抑制された。しかし、インサイドアウト法により記録されたCa依存性Kチャネル電流にはNO-Cys(10uM)は無効であった。以上のことからNO-Cysで活性化されるKチャネルは少数の細胞にしか存在しない可能性があること、電位依存性KチャネルやCa依存性Kチャネルには作用しないことがわかった。現在上記の可能性を探るため、酵素処理によらない少数細胞標本を作成し、微小電極法により検討中である。
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