研究概要 |
GTP結合蛋白質G_s・G_iによるホルモン感受性アデニル酸シクラーゼの制御については、既にその詳細が明らかにされている。申請者は、この制御系に加えて、アデニル酸シクラーゼ活性化に際して重要な役割を果たすと思われる因子、GTP結合性ペプチド(分子量約3,000)をラット肝可溶性画分に見いだした。本因子はβアドレナリン性応答におけるGTPの効果を増幅する作用を有しており、既知の高分子量および低分子量GTP結合蛋白質とは異なる分子として位置づけられる。当該研究により、更に以下の知見を得た。 1.本因子の最終精製:2回の分子ふるいクロマトグラフィーにより得られた粗精製標品を逆相(C_<18>)HPLCにより精製した。GTP結合能を有する2つのピーク(I、II)が得られ、より早く溶出されるピークIに一致して、GTPのアデニル酸シクラーゼ活性促進能を増幅させる活性が検出された。この分画Iを最終精製標品とし、分画IIと共に分析した。 2.本因子の構造決定:両分画のアミノ酸組成分析を行ったところ、分画Iはロイシン含量(17mol/100mol)が、分画IIはグリシン含量(34mol/100mol)がそれぞれ高かった。一方、両分画共N末端アミノ酸のブロックの存在が示唆されたためアミノ酸配列の決定には至らなかった。 今後、部分または全アミノ酸配列が明らかになった時点で、これをもとにcDNAのクローニングを開始したい。また、本因子のGTP効果増幅作用のメカニズムについても解析する予定である。
|