異常血色素におけるタンパク質の構造変化と機能異常相関

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05670116
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 長井 雅子 金沢大学, 医療技術短期大学部, 教授 (60019578)
• 研究分担者: 中島 広志 金沢大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (20020026)
• キーワード: ヘモグロビン / 赤外分光 / 円二色性 / 異常血色素 / 共鳴ラマン

研究概要

今年度の本研究費で購入した等電点電気泳動装置で従来24時間かかった異常Hbの分離がたったの6時間で出来るようになった。不安定な異常Hbでも精製過程における変性を最小限に抑さえることが出来たのは、予想以上に効果的であった。したがって、精製標品が優れているため各種分光学的測定においてもよい状態で長い時間の測定が可能となり研究も進んだ。
研究の進展状況は以下のとおりである。(1)円偏光二色性(CD):Hbのoxy-deoxyにともなう芳香族アミノ酸の動きを見るため、近紫外域のCDを測定した。特にdeoxyHbに見られT状態マーカーとしてよく用いられる287nmの負のCD帶に注目した。PerutzらはこのCD帶はβ37Trpの変化によると示唆している。しかし、このTrpがSerに変異したHb Hiroseでは、正常Hbと同程度の負のCD帯が見られた。一方、α42TyrがHisに変異したHbでは著しく減少したので、この負のCD帯はα42Tyrの変化によると結論できた。(2)フェムト秒時間分解赤外分光:Hb M BostonのCO結合型では、正常鎖由来のCO伸縮振動が1950cm^<-1>と異常鎖由来の1970cm^<-1>との2本のバンドが見られる。Prof.Hochstrasserとの協同研究でこの2本のバンドに注目して、光解離後のCOの再結合をフェムト秒赤外分光で調べた。
これらの成果については平成5年度国際円二色性会議(コロラド)および国際生物無機化学会議(カリフォルニア)において発表した。

研究成果

• [文献書誌] Lian,T.,Locke,B.,Kitagawa,T.,Nagai,M.& Hochstrasser: "Determination of Fe-CO geometry in the subunits of carbonmonoxy Hemoglobin M Boston using femtosecond infrared spectroscopy." Biochemistry. 32. 5809-5814 (1993)
• [文献書誌] Nagai,M.& Kitagawa,T.: "Resonance Raman and circular dichroic spectra of Hemoglobin Hirose(β37Trp→Ser)." Journal of Inorganic Biochemistry. 51. 126 (1993)
• [文献書誌] Kitagawa,T.,Sakan,Y.,Nagai,M.,Ogura,T.,Fraunfelter,F.A.,Mattera,R.& Ikeda-Saito,M.: "Time-resolved resonance Raman studies of recombination intermediates of CO-photo-dissociated myoglobin,hemoglobin and their E7 mutants." Journal of Inorganic Biochemistry. 51. 217 (1993)
• [文献書誌] 長井雅子: "ヘモグロビンM症" 生化学. 65. 1160-1164 (1993)
• [文献書誌] Hirota,S.,Ogura,T.,Shinzawa-Itoh,K.,Yoshikawa,S.,Nagai,M.& Kitagawa,T.: "Vibrational assignments of the FeCO unit of CO-bound heme proteins revisited:Observation of a new CO-isotope-sensitive Raman band assignable to the FeCO bending fundamental." Journal of Physical Chemistry. (in press). (1994)