1・低分子キニノーゲン重鎖上のQVVAG配列が欠損したタンパク質をコードするcDNAの作製:ドメイン2及び3に存在するQVVAG配列が欠損したcDNAを作製するために、合成mismatch primerによるsite-directed mutagenesisおよびPCR mutagenesisを試みた。変異を導入する隣接部位にAT含量が多いこともあり、完全にQVVAG配列が欠損したタンパク質をコードするcDNAは得られていないが、現在プライマー設計を変えて検討している。 2.野性型及び変異低分子キニノーゲンの昆虫細胞での発現:平成2〜3年度の研究において、私共はBHK細胞で低分子キニノーゲンの発現を試みたが、発現量が非常に少なかった。そこで、目的遺伝子産物を大量に発現できることで、近年特に注目されているバキュロウイルス発現系の利用を試みた。まず組み換えウイルスを作製するために、(1)低分子キニノーゲン遺伝子をトランスファーベクター(pVL1392/1393)に挿入した。(2)(1)で作製されたベクターをウイルスDNAとともに昆虫細胞(sf細胞)へco-transfectした。(3)プラークアッセイにより組み換えウイルスを選択した。この結果、いくつかの組み換えウイルスのプラークが確認されたのでsf細胞に感染させたタンパク質の発現を試みた。しかし、目的のタンパク質の発現は確認できなかった。ベクターへの遺伝子導入が確実に行われていることは制限酵素処理等により確認されているので、co-transfect以降の過程、つまりtransfectionの効率、昆虫細胞の維持継代やプラークアッセイに問題があったと考えており、これらについて検討を加えているところである。 3.野性型及び変異低分子キニノーゲンの大腸菌での発現:私共はバキュロウイルス系以外でのタンパク質発現法として大腸菌も利用しており、現在、発現の誘導条件を求めているところである。
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