トロンボキサン(TX)A_2は、アラキドン酸の代謝産物であり、強力な血小板活性化作用や血管・気管支平滑筋収縮作用を示す物質であり、これらの組織において生理的、病理的に重要な役割を持つことが知られている。一方、最近我々はTXA_2受容体のcDNAクロンを得、その一次構造を解明すると同時にマウスの種々の組織におけるTXA_2受容体mRNAの発現を検討し、その広範な分布を明らかにした。本研究は、TXA_2受容体とGTP結合蛋白質の再構成系の確立と、それを用いたTXA_2受容体情報伝達機構の解明を目的としている。 昨年度の本研究によって、ヒト血小板よりその主要な三量体GTP結合蛋白質であるG_qとG_i蛋白質を均一となるまで精製し、これらと部分精製したヒト血小板TXA_2受容体とを脂質膜に再構成することにより、機能的再構成系を確立した。 本年度は、確立された再構成系を用いて、受容体のリガンド結合の特異性や受容体のアゴニスト刺激にともなうGTP結合蛋白質の活性化をGTP結合能やGTPase活性を指標として詳細に検討した。その結果TXA_2受容体は、G_qとG_i蛋白質の両者と機能的に連関することを明らかとし、その連関の効率や活性化されたG_qとG_i蛋白質のGTP結合能やGTPase活性の評価を行った。この成果は、従来より指摘されていたTXA_2受容体を介する情報伝達経路の多様性の成因を説明するものと考えられる。また、TXA_2受容体とG_i蛋白質との連関の証明は、TXが或種の細胞において示す細胞増殖効果における情報伝達経路にこの系が関与していることを示唆するものと考えられる。
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