オルニチン脱炭酸酵素(ODC)は、生成物ポリアミンで誘導される蛋白質「アンチザイム」とATPの存在下に26Sプロテアソームによって分解される。本研究では、分解の機構を明らかにするためにODCとアンチザイム構造変異体を用いて、すでに確立した再構成分解系でODC分解を検討した。また、ODC分解産物を解析することによって、26SプロテアソームのODC分解様式を検討した。その結果、1.一アミノ酸置換(G387-D387)によって二量体形成が阻害されているODCの分解にもアンチザイムが必須である。2.C441-W441の一アミノ酸置換したODCは、過剰のアンチザイム存在下でも26Sプロテアソームによる分解速度は正常ODCの1/10以下である、3.ODCのC末端に近い領域の合成ペプチドはODC分解を強く阻害する、4.アンチザイム(227AA)は、アミノ酸122-218があればODCに結合し、阻害するが、ODC分解促進作用には、さらに、N末端側113-118(あるいは88-118)が必要である、5.アンチザイムとbeta-ガラクトシダーゼ、あるいはマルトース結合蛋白質(MBP)との融合蛋白質はODC分解を促進するがそれ自身はプロテアソームに依って分解されない、6.26SプロテアソームによるODCの分解産物は、ODCの全域におよぶ5-11のオリゴペプチドである。7.26SプロテアソームはODCを酸性、塩基性アミノ酸でも切断できるが、主として中性/疎水性アミノ酸のC端側で切断する、とが明らかにされた。 以上の結果を総合すると、アンチザイムは単量体のODCに結合して構造変化をもたらし、ODCのC末端近傍にかくれて存在する認識部位を露出させてプロテアソームに引き合わせ、その結果、多機能のプロテアーゼ活性をもつプロテアソームによってODCは内部から多数のサイトで切断されるという可能性が考えられた。この認識部位はODCに限らない普遍的なものと推定され、その同定が今後の課題である。
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