研究概要 |
血色素合成に必要なヘムとグロビンを協調的に合成調節されることは昔から知られており、また双方の転写調節に関与する赤血球特異的転写因子の存在が最近明かにされてきている。しかしながら、その相互調節の上でヘムとグロビンのいずれが優位にあるのかについてはまだ明かではなかった。そこで、DR-1細胞におけるヘムとグロビンの合成調節の研究を行ない、ヘム合成系の誘導がグロビン遺伝子の発現に必須であること、調節は転写及び転写後の双方のレベルで行われていることを明かにした(Blood、印刷中)。またDR-1細胞を用い、ヘム合成系の最終酵素であるフェロキラターゼmRNAの安定な発現のためにヘムが必須であることを見出した。(Brit.J.Haematol.、印刷中)。 一方、正常MEL細胞にALAS-EアンチセンスRNAを導入・発現しそのヘム系に及ぼす影響を観察した。その結果ALAS-Eの発現の減少に伴い、後続するヘム合成系諸酵素の発現が減少することを明かにした。この減少は我々が既にCR-1細胞で観察したものとよく一致している。そこで、その機構を解明するために赤血球特異的転写因子のひとつであるNFE-2に着目し、予備的実験でALAS-Eの減少によるヘム合成の抑制がNFE-2の遺伝子発現を抑制するのではないかという結果を得た。この結果が正しければ、最近NFE-2の結合領域がヘム合成系諸酵素においても存在することが明かにされたので(Regulation of Heme Protein Synthesis,H Fujita,ed.,AlphaMed Press,Ohio,1994)赤血球系ヘム代謝調節の解明に繋るのではないかと期待される。 更に、平成6年度の研究の準備としてALAS-EcDNAを導入・発現したDR-1細胞を作成した。
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