肝臓におけるL型ピルビン酸キナーゼ(LPK)遺伝子とグルコキナーゼ(GK)遺伝子の転写はインスリンにより著明に促進される。その機序はまだ不明であるが、両遺伝子で異なることが示唆されている。本研究はLPKとGKの遺伝子に対するインスリン作用を遺伝子のシス作用領域とトランス作用タンパク質との相互作用の点から解明しようとすると共に、肥満型NIDDMラット肝でのインスリン抵抗性の機序を明らかにすることを目的とし、以下の成績が得られた。1、LPK遺伝子のインスリン応答性エンハンサーユニットを構成する2つのエレメントに結合する核タンパク質をラット肝臓から精製した。L IIに結合するタンパク質は電気泳動上2本のバンドを示し、これらに由来するペプチドの配列を解析したところ、NF1様配列と未知の配列が得られた。L IIIに結合するタンパク質も2本のバンドを示し、同様にペプチドシークエンスを行ったところ、自己抗原Kuの配列と未知の配列が得られたが、Ku抗原は非特異的に2重鎖DNA末端に結合するので、目的のタンパク質ではないと考えられた。2、GK遺伝子のインスリン応答性領域を初代培養肝細胞を用いたCATアッセイにより同定した。この領域は-87から-73までに存在し、チミジンキナーゼのプロモーターに連結した場合も有効であった。3、肥満型NIDDMラットではGKやホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの遺伝子に対するインスリン作用が損なわれていたが、LPK遺伝子に対する作用は正常であり、このラットではインスリンレセプター以降の過程に異常があることが考えられた。
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