家族性低リン血性ビタミンD抵抗性クル病は、腎近位尿細管でのリン再吸収障害により過リン酸尿と低リン血症を呈し、結果としてカルシウム/リン積の低下によりクル病または骨軟化症を発症する先天性の代謝疾患である。我々は、本疾患の原因遺伝子を明らかにする目的で、ヒト腎cDNAライブラリーよりNa依存性リン輸送担体遺伝子(NPT-1)をクローニングした。NPT-1遺伝子より推定される蛋白は、既に報告されているウサギ腎Na依存性リン輸送担体(NaPi-1)とアミノ酸レベルで約69%の相同性が見られた。また、NPT-1遺伝子を基にcRNAを合成しアフリカツメガエル卵母細胞にて機能発現を調べた結果、明らかにNa依存性のリン輸送活性が確認された。また、リンに対する親和性は0.29mMであり、ヒト腎近位尿細管刷子縁膜で見られるリン輸送特性と一致した。さらに、NPT-1遺伝子は腎皮質、肝および脳において発現が確認されたが、小腸を含む多の組織では発現は見られなかった。また、NaPi-3およびNPT-1に共通のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いるhybrid depletion法により、NaPi-3およびNPT-1がヒト腎皮質における主な輸送担体であることを確認した。また、染色体マッピングの結果、NaPi-3は5番染色体にNPT-1は6番染色体にマップされた。これらの高親和性Na/リン輸送担体は、常染色体劣性遺伝形式をもち高カルシウム尿症を伴う低リン血症クル病(HHRH)の原因遺伝子である可能性が考えられ、今後患者解析を行う予定である。
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