研究概要 |
LECラット病因遺伝子に連鎖する遺伝子を検討するために、まずヒトウイルソン病病因遺伝子が染色体13番の長腕14.3に位置し13q14.1-14.2のエステラーゼ(Es)Dや13q14.3の癌抑制遺伝子RBと連鎖することに着目した。LECラットの病因遺伝子もまた、ラットエステラーゼやRB遺伝子に連鎖している可能性が考えられることより、F344、PVGとLECラットとの戻し交配ラットを作製し検討を行った。 ラットエステラーゼ18種のうち12種の遺伝子は19番染色体リンケージグループVに存在する。その代表例Es-1,2,10について検討したが、連鎖は見られなかった。残りのエステラーゼのうち、Es-6は8番染色体に存在するが、やはり連鎖は見られなかった。Es-12は染色体座位はわかっていないが、マウスエステラーゼ14との相同性からやはり8番染色体に存在する可能性があった。Es-12はF344との戻し交配ラットで組換え率27.8%で連鎖する可能性がのこされた。更に8番染色体にある3つのリンケージグループA,B,CについてPCRマーカー遺伝子を用いて検討した。Es-6の存在するリンケージグループBのTPMマーカーではやはり連鎖は見られず、またリンケージグループCに存在するPKATAマーカーでも連鎖は見られなかった。Es-12自身もTPMマーカー、PKATAマーカーとは連鎖が認められなかった。 RB遺伝子との連鎖解析については、まずラットRBcDNAをPCR法を用いて単離し4432塩基の配列を決定した。ヒトのRBのゲノムの構造を参考にイントロン及び3′-非翻訳領域を中心にPCRを行い、多型を検索した。その結果3′-非翻訳領域に遺伝子マーカーとなりうる3ケ所の鎖長多型を見いだした。この多型を用いて戻し交配ラットを検索した結果、病因遺伝子とRB遺伝子との連鎖の可能性は、極めて少ないことがわかった。 以上の結果より、LEC疾患遺伝子は、ヒトの染色体13q14.3領域と異なる遺伝子連鎖形式を有するものと考えられる。現在ヒトウイルソンの病責任遺伝子と考えられるWNDの塩基情報をもとにラットWND遺伝子の単離を試みている。
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