研究概要 |
我々はウイルス感染細胞にたいして細胞融合を誘導することのできる宿主細胞因子に対するモノクロナール抗体を得ることに成功した。この因子をFusion Regulation Protein(FRP-1,-2)と命名し、そのモノクロナール抗体を用いてFRPの諸性質を検討してきた。本研究の目的としては:(1)FRP-1の大量精製、(2)アミノ酸部分配列の決定、(3)遺伝子クローニングによる全構造の決定、(4)細胞におけるFRPの調節機構、以上の点をあきらかにし、多核球形成の分子機構を解明する。以上の目的に対し、平成5年度は1.FRP-1の大量精製に成功した。2.アミノ酸配列分析を進めた。3.抗体を使用したエクスプレッションクローニング(1gt 11,pCDM8の両者の系)にて候補クローンをいくつか得た。4.このFRPシステムを介する膜融合機構に関与する分子についても検討したところ、タンパク質リン酸化酵素阻害剤がこの膜融合系を阻害することを見出した。平成6年度に入り、アミノ酸シークエンスより、FRP-1は4F2 antigenn(CD98)とのホモロジーが示唆され、CD98の抗体がウイルス感染細胞の細胞融合においてFRP抗体と同様な効果を持つことが明らかとなり、さらにCD98を発現させた細胞に膜融合を誘導することに成功し、FRP-1の本体はCD98であるとの結論にいたった。現在のところ、CD98の生理的役割は未解明であるのでCD98のインテグリン様の特性の発見は興味深い。 さらにFRPはいくつかの分子(Fusion Reguration Protein Related Molecule:FRM)と複合体を形成していることが示唆されているが、このFRMに対するモノクロナール抗体を用いて解析したところ、ビメンチン、デスミン等の中間径フィラメントとインターラクションしていることが明らかとなった。上記したように目的の大半が達成され、さらに進めた研究を行う予定である。
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