Fas抗原はTumor Necrosis Factor(TNF)リセプター、Nerve Growth Factor(NGF)リセプターと類似の細胞膜貫通タンパク質で、特異抗体との反応により発現している細胞自身にアポトーシスを誘導する。我々はFas抗原をリセプターとする未同定のリガンドが存在すると考え、Fasリガンドの同定と、その遺伝子の単離を試みた。1)まず、マウスFas抗原の細胞外部とヒトIgG1のFc部分からなる可溶性のキメラ蛋白(mFas‐Fc)をコードするキメラ遺伝子を作製、発現させ、mFas‐Fcを大量調製した。2)Fas抗原を発現する細胞のみを特異的に傷害するCTLハイブリドーマ(ラットxマウス)PC60‐d10S(以下d10S)において、mFas‐Fcがd10SのFas抗原依存性細胞傷害活性を特異的に阻害すること、mFas‐Fcがd10Sに特異的に結合することをフローサイトメトリーを用いて示し、d10SがFasリガンドを発現していることを明らかにした。3)フローサイトメトリーを用いて、mFas‐Fcにより強く染色される細胞を繰り返しソーティングすることにより、Fasリガンドを強く発現するサブラインを樹立した。4)このd10Sサブラインの膜画分を1%NP‐40で可溶化し、その遠心上清よりmFas‐FcカラムとConcanavalin Aagarose beadsを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより分子量40kDの糖タンパク質(gp40)を精製した。5)この精製gp40はそれ単独で、Fas抗原を発現する細胞に対し特異的に細胞死を誘導し、機能的なFasリガンドであることを明かにした。さらに、6)d10SサブラインよりcDNA libraryを作製し、COS細胞に発現させ、mFas‐Fcを用いたパニング法によりFasリガンドcDNAの単離に成功した。このFasリガンドcDNAはラット由来のものであった。7)単離されたラットFasリガンドcDNAは、278アミノ酸からなり、TNF/NGFファミリーに属するタイプII膜蛋白質をコードしていた。8)ノーザンブロット法により、精巣及び活性化された脾細胞と胸腺細胞でFasリガンドmRNAが発現していることを見いだした。
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