研究概要 |
増殖因子が標的細胞や腫瘍細胞を分裂・増殖させるシグナル伝達に主要な役割を果たしているが、そのメカニズムを解明することが現在もっとも重要な急務の一つとなっている。 IL-2レセプターβ鎖のシグナル伝達に関してはヒトT細胞株MT-2,MT-1、ILT-Matを用いて行ない、次のことを明らかにした。1)IL-2レセプタβ鎖は膜表面に発現しており、2)IL-2Rαに比し約20分の1程度のレセプター数であることを免疫電鎖金コロイド法を用いて明らかした。3)IL-2R添加後5分でインターナリゼーションがピークに達し、4)30分後にはIL-2Rβ鎖が核周囲に認められた。この基礎的な成績はIL-2Rβ鎖が直接増殖に関与しているとする生化学的成績を裏付ける成績であり、細胞内の部位を同定している重要な所見であると思われる。 更に手術摘出したヒト消化管5例についてIL-2Rα及びβ鎖について発現しているかどうかを検索した。大腸癌2例、クローン病2例、潰瘍性大腸炎1例を検索した結果、IL-2Rα鎖は全例に発現していたがIL-2Rβ鎖の発現は見出されなかった。 in vitroでの基礎研究においては研究目的に挙げたものをほぼ満した。新たに本大学の菅村らによってIL-2Rγ鎖の抗体が作製されたので、MT-2、MT-1、ILT-Matを用いてγ鎖の検索を行なった。その結果IL-2Rβ鎖とまったく同じ挙動を呈することが見い出された。この成績は菅村らの生化学的成績を裏付けるものであり、更に細胞膜にほとんど限局するものであること新たに見い出した。 現在、ヒト消化管およびその腫瘍、大腸癌、クローン病、潰瘍性大腸炎等についてIL-2Rγ鎖の発現を抑えることを試みている。
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