研究概要 |
昨年度は、Epstein-Barr virus(EBV)と胃癌の関連性についての研究で、リンパ上皮腫型胃癌だけでなく通常型胃癌の中にもEBVの関連するものがあることを見い出した。今年度は研究の対象を拡大し、EBVの関与が考えられる種々の疾患で、以下の結果を得た。(1)胃癌:EBV関連胃癌患者では、対照群に比し抗EBV-viral capsid antigen(VCA)IgGタイプ、抗early antigen(EA)IgGタイプ、抗EBNA抗体価が上昇しておりEBVの関与を裏付けるとともに、腫瘍マーカーとしての意義も示唆された。リンパ上皮腫型胃癌では浸潤リンパ球はT細胞が主体で、CD4陽性細胞の割合がCD8陽性細胞より優勢であった。EBV関連胃癌細胞の表現形質の解析では、ICAM-1,HLA-DRの発現増強傾向が認められ、EBV感染との関連が示唆された。(2)膿胸に伴う悪性リンパ腫:ISH法により6例中3例(50%)でEBVが検出され、EBVとの関連性が示された。さらに、EBV陽性例3例中2例ではlatent membrane protein(LMP)の発現も証明され、腫瘍発生段階におけるEBVの関与が示唆された。(3)Hodgkin病:30例中13例(43%)の症例で腫瘍細胞内にEBVが検出され、亜分類ではリンパ球優勢型1/4(25%)、結節硬化型2/6(33%)、混合細胞型9/17(53%)、リンパ球減少型1/3(33%)と混合細胞型に多く、欧米の報告と一致する結果であった。さらに若年者と高齢者のHodgkin病ではEBVの検出される割合が高い傾向がみられた。(4)血球貪食症候群を呈するT細胞性悪性リンパ腫:以前よりEBV感染が血球貪食症候群を生じることが知られていたが(virus-associated hemophagocytic syndrome)、T細胞性悪性リンパ腫の腫瘍細胞内にEBVが存在し、血球貪食症候群を生じた症例を報告した。
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