研究概要 |
ヒト移植腎における抗原提示細胞、すなわちdendritic cell(DC)を初めて免疫電顕的に同定し、論文発表(Virchow's Archiv Pathol A 1991,Transplant Proc 1993)及び学会発表(第14回国際移植学会、パリ、1992)を行ってきた。そしてその由来がそれまでの定説であったドナー由来ではなく、レシピエント由来であることを示唆してきた。平成5年度の研究ではそれを更に直接的に証明すべくDCの核内のY染色体の有無をマーカーとしてその由来を決定する研究計画をたてた。方法はまずDCの同定を行い、次にY染色体を証明する二重染色で、この順序を逆にすると不可能であることが分った。DCの同定には細胞質内に存在するS100βを証明する為に、アルカリフォスファターゼ標識SAB法又はイムノゴールド法による酵素抗体法を利用した。次にY染色体の証明にはOncor社のクロモゾームYカクテルプローブを用いてin situ hybridizationを行い、最終的にはペルオキシダーゼ標識SAB法による酵素抗体法にて染色した。この両者の最終反応産物の色は異なっており、またS100βは細胞質内にあり、Y染色体は核内にあることから、同一細胞(DC)で両者を同時に観察することが可能であった。結果は予測通りで、1.ドナーが女、レシピエントが男の移植腎では、DC及び浸潤細胞にY染色体が観察された。本来の移植腎組織を構成する種々の細胞にはY染色体は観察されなかった。2.ドナーが男、レシピエントが女の移植腎では、DC及び浸潤細胞にY染色体は認められず、逆に移植腎組織を構成する細胞に認められた。3.ドナーもレシピエントも男の場合は、DC及び浸潤細胞、移植腎構成細胞にY染色体は認められた。以上の結果よりヒト移植腎に出現するDCはレシピエント由来であると結論を下した。この結果は本年行われる第15回国際移植学会(京都)にて発表の予定である。
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