Milgram教授より供与された抗TSH受容体抗体を用い光顕レベルでのTSH受容体の局在を各種甲状腺疾患(正常、慢性甲状腺炎グレブス病甲状腺甲状腺癌について免疫組織化学的に検討した結果、TSH受容体は常に甲状腺滬胞細胞の基底側細胞膜に存在することが明らかとなった。甲状腺癌では基底側細胞膜におけるTSH受容体の発現は正常甲状腺に比しやや強く又細胞質内にも、発現が観察された。又甲状腺癌では分化度の低くなるにつれてTSH受容体の発現も又弱くなる傾向がみられた。慢性甲状腺炎ではリンパ球浸潤と接する滬胞細胞の基底部でのTSH受容体の発現に不連続性が認められた。最も目立つ変化はグレブス病甲状腺での極めて強いTSH受容体の発現であった。このことはグレブス病患者にみられる刺激型TSH受容体抗体とTSH受容体との間にautocrine mechanism様の機序が作用しこれがグレブス病の発症と関係する可能性が示唆された。現在組織ホモジネートを用いimmunoblottingにより、これら免疫組織化学の結果を確認中である。今年度はさらに電顕レベルでのTSH受容体の局在の確認、及びTSH受容体の局在とアデニレート・サイクラーゼ活性G-蛋白の局在との関連についても検討し甲状腺滬胞細胞におけるTSH受容体機構の形態学的解明と病的甲状腺でのその変化を観察し、TSH受容体の甲状腺滬胞細胞の増殖機能に果す役割を明らかとしたい。
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