正常粘膜27切片ではp53蛋白陽性細胞は見いだされなかったが、腸上皮化生粘膜では21切片中5切片(24%)においてp53蛋白陽性細胞が主として腺底部において散在性に分布していた。パラフィン包埋ブロックからDNAを抽出し、PCR-SSCP法にてp53遺伝子変異について検討した。腸上皮化生粘膜においてp53蛋白細胞出現症例では5例中2例で変異が見いだされ、エクソン5と8に点変異の存在することが明かとなった。そこで、17番染色体数およびp53遺伝子数をFISH法にて検討すると、正常粘膜10症例では17番染色体セントロメアのシグナルは2個が平均88.2%、1個が11.0%、p53遺伝子のシグナルは2個が平均86.1%、1個が12.0%であった。腸上皮化生17症例では、17番染色セントロメアのシグナルは2個が平均89.0%、1個が10.0%、p53遺伝子のシグナルは2個が91.3%、1個が7.7%であった。従って、腸上皮化生粘膜の一部ではp53遺伝子の点変異が生じているが、欠失はないことが示された。 萎縮性胃炎、腺種、胃癌におけるアポトーシス細胞をTUNEL法にて可視化した。 本法は通常のホルマリン固ナ定パラフィン包埋切片で可能であることを確認した。 光顕的にアポトーシス細胞は核が濃縮し、細胞質は好酸性となって縮小していた。また、核が断片化したアポトーシス小体も見いだされた。正常粘膜においてはアポトーシス細胞は稀であったが、完全型腸上皮化生450腺管中166腺管(37%)、不完全型腸上皮化生1100腺管中539腺管(49%)でアポトーシス細胞が見いだされた。胃腺腫45病変では低異型度群より高異型度群で有意に高頻度であった(P<0.01)。 高分化型腺癌9例では7.7〜14.5%(平均10.9%)、低分化型腺癌5例では2.7〜7.5%(平均4.0%)でTUNEL陽性癌細胞が見いだされ、前者において頻度が高かった(P<0.01)。 以上より、胃粘膜、腺腫および胃癌ではアポトーシスが発現しており、組織形態の保持のみならず、腫瘍細胞の増殖進展に関与していることが明かとなった。
|