研究概要 |
本研究により以下の点が明かとなった. 1)多核巨細胞の表現形質等:RS細胞については以下のとおり.分化抗原:HLA-DR,CD25,CD15はほぼ全例で発現されている.一方LCA(CD45)やCD1,3,5などのT抗原はほぼ全例で欠如している.CD19,20などのB抗原はLPとNSでは陽性となることが多い.CD30はLPでは30%程度のみに陽性だが,他の型ではほぼ全例に出る.増殖関連抗原:トランスフェリンレセプター(CD71),Ki-67は全例に陽性であり,細胞遺伝学やDNA分析からもRS細胞は染色体上4Nのモードをもつ増殖細胞であり,PCNA,α-polymeraseの核内反応分布の計測から,G1期が異常に長い増殖細胞であることが示された.細胞質内抗原ではS-100βやリゾチームが陽性になる例もある.免疫関連遺伝子:RS巨細胞が多数を占めるLDについてIg及びTCR遺伝子の再構成を検索すると,いづれもgermlineのままであった. 2)他の巨細胞:CD30は他の腫瘍性多核巨細胞(T細胞性,B細胞性,ALCL,悪性中皮腫など),非腫瘍性多核巨細胞(反応性中皮細胞),感染性巨細胞(CMV感染上皮細胞や内皮細胞)でも認められる.HLA-DRも同様である.例外は巨核球であり,一部の腫瘍性巨核球を除き正常細胞ではCD30は陰性である.また細胞融合によることが明かとなっている破骨細胞,異物巨細胞,横紋筋細胞では陰性である. 3)Endomitosis:CD30陽性の多核巨細胞は多倍体であり,なおかつ分裂能力を有する.また単核の2倍体細胞にもCD30陽性のものがあり,ホジキン病では2極分裂以外にも3極分裂,4極分裂を認めることができる.しかし細胞質分裂の像はまれにしか認められない.同じ現象は反応性中皮細胞でも認められる.したがってendomitosisつまり有糸分裂(mitosis)は生じるが,細胞質分裂を伴わない細胞増殖は正常にも病的状態でも生じている.
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