研究概要 |
HTLV-1のin situ hybridization(ISH)法の確立には、1)対象とするHTLV-1 proviral DNA領域の決定、2)probeの作製、3)ISH手技の各項目の細部の決定が必要である。これらを、考慮しつつ、研究を進めている。 polymerase chain reaction(PCR)でHTLV-1proviral DNA pX Tax(Tax)のconcatamer(重鎖体)probeを作製出来、これを用いたISHで細胞質陽性像を得たので、227例の悪性リンパ腫(ML)(115例のT細胞性、73例のB細胞性、14例のホジキン病と25例の20才以下の症例)の検討を行った。このISH法はTaxの発現とHTLV-1のRNAゲノムを標識していることが示唆され、以下の鹿児島県のMLにおけるHTLV-1感染に関する示唆が得られた。T細胞性MLの中でも形態学的に成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)が示唆される45例中44例(98%)で、ML細胞はそのISH陽性像を示し、ATLLの病理組織学的確認の可能性を示唆した。それ以外のT細胞性MLやB細胞ML、ホジキン病で、このISH陽性症例を認め、ATLL以外のHTLV-1関連MLの存在が示唆された。20才以下の症例の中にもISH陽性例があり、鹿児島県でのHTLV-1関連MLの若年発病例の存在が示唆された。小型リンパ球や組織球にも陽性細胞を認め、HTLV-1キャリアーの病理組織学的確認の可能性、組織球がHTLV-1感染ホスト細胞であることの可能性が示唆された)日本病理学会、悪性リンパ腫国際会議(スイス)、日韓リンパ網内系ワークショップ(韓国)、日本樹状細胞研究会で発表し、レトロウイルス学会(USA)で発表の予定)。 次に、HTLV-1 proviral DNAの各領域(LTR,Hag,Pol,Env,Tax,Rex)の8種のprobeをPCRで作製し、これらの中からTax(159bp)とRex(555bp)とEnv(327bp)の3つのprobesを用いて、少数のHTLV-1関連T細胞性(4例)とB細胞性ML(3例)とホジキン病例(1例)を検索した。その結果、TaxとRexのISH陽性像は同様であり、同一のTax/RexのmRNAを標識していることが示唆された。EnvのISH陽性像とTaxとRexのISH陽性像の比較で、HTLV-1 proviral DNAの発現の様相が、B細胞性リンパ腫と、T細胞性リンパ腫とホジキン病で異なる可能性が示唆された(日本網内系学会にて発表予定)。
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