研究概要 |
研究初年度に報告したHTLV-1のpX Tax領域のconcatamer probeを用いた悪性リンパ腫の検索(DENDRITIC CELL vol.4)後に、今年度は、HTLV-1の特定領域の高度ビオチン標識probeをpolymerase chain reaction(PCR)で作成して、DNA-RNA in-situ-hybridization(ISH)とDNA-DNA ISHの方法を確立し、HTLV-1関連肺病変、ATLL解剖例、HTLV-1キャリアー母の胎盤、HTLV-1-associated myelopathy(HAM)の中枢神経病変の検索を予定した。 HTLV-1の特定領域の高度ビオチン標識probesは、7つのLTR,gag,pol-1,pol-2,env,Tax,Rexの二本鎖DNA probesを作成出来た(1994年日本網内系学会に発表)。これ等のprobesを用いて、ISHの方法の確立を目指した。DNA-RNA ISHでは、lambda bacteriophage 500bp probeとprobeを含まないhybridization液でのISHを検討して、backgroundとhybridized probeの可視化のAlkaline phosphatase反応での非特異反応の問題を解決した。しかし、DNA-DNA ISHは、切片中のDNAの熱変性法を検討して、アルミの弁当箱中に、切片と70% formamide 2x SSC 150mlを入れて200℃で10分間の加熱が適当であることが判明したが、7つのprobesのカクテルを用いて、hybridization時間を3日間として、alkaline phosphatase反応を一晩と延長して、検出感度を上げたが、微細な陽性像しか得られなかった(1994年国際病理アカデミー、癌学会、樹状細胞研究会にて発表)。DNA-RNA ISHでのDNA readingの方向の検出とDNA-DNA ISHの感度の向上を企図して、PCRによる一本鎖DNA probeの作製を試みている(1995年分子病理研究会で発表)。 DNA-RNA ISHでは、パラフィン切片でも免疫染色可能なHTLV-1関連蛋白に対する抗体が開発されたので、HTLV-1のmRNAレベルと蛋白レベルでHTLV-1の特定領域の活性化の様相を把握する方法が確立出来た(皮膚リンフォーマ研究学会誌に印刷中、1995年病理学会発表の予定)。 上記の様に、今年度、HTLV-1のISHの方法論の確立を求めて研究を進めた。HTLV-1の関連病変の検索は、HTLV-1の初期感染の一つである経胎盤感染の様相を知るために、キャリアー母の胎盤の検索する準備を進めている。また、HTLV-1のリンパ腫形成との関係は、皮膚リンパ腫で検討すべく準備を進めている。研究の進行状況から、HTLV-1関連肺病変とATLL解剖例とHAMの中枢神経病変の検索は、次年度に回した。
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