急性心筋梗塞の進展機構における補体活性制御因子の病態的意義

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05670178
• 研究機関: 名古屋市立大学
• 研究代表者: 多田 豊曠 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (20106230)
• 研究分担者: 国松 己歳 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (70145746) ; 岡田 秀親 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (30160683)
• キーワード: 補体 / 心筋梗塞 / 炎症 / 細胞壊死 / 虚血 / 膜傷害性補体反応

研究概要

我々はヒトの健常心筋細胞の細胞膜上に補体活性制御因子の一つである20kD Homologous Restriction Factor(CD59)(以下 HRF20と略す)が存在することを免疫組織化学的に明らかにした。従来、HRF20の免疫染色は凍結切片を用いてなされてきたが、我々の方法はアセトン固定組織のパラフィン切片を用いるもので、免疫組織化学的研究には極めて有効である。この方法によって、梗塞発症後様々な時間で死亡したヒト心筋梗塞の剖検例のHRF20の分布を検討した結果、梗塞巣内の心筋細胞はこれを消失することを明らかにした。
別の補体活性制御因子であるDAFの心筋梗塞巣における分布を同様の方法で検討したところ、HRF20とほとんど同様の結果が得られた。
HEF20やDAF消失部位に完全に一致して梗塞心筋細胞に補体C5b-9(膜侵襲複合体)が沈着することも証明した。このような背景のもとに、心筋梗塞における心筋細胞の変性・壊死過程の進行と梗塞巣への好中球浸潤機序に補体系を中心にした非特異的生体防御機構の働きがあることが示唆された。今後更に梗塞発症後早期の症例を蒐集しどの時期から補体活性制御因子が消失し、補体沈着が始まるかを明らかにしたい。
ラットの実験的心筋梗塞については現在進行中であるがまだ、報告すべきデータが得られていない。
また、HRF20のin situ hybridizationも進行中であり心筋細胞にmRNAの存在が認められるプレリミナリーな結果を得ている。

研究成果

• [文献書誌] Toyohiro Tada: "Expression of 20 KD homologous restriction factor of complement on myocardial cells:An immunohistochemical study using acetone-fixed and paraffin-embedded tissues." J.Histochem.Cytochem.41. 119-122 (1993)
• [文献書誌] Hisashi Tateyama: "Thymic epithelial tumours:evaluation of malignant grade by quantification of proliferating cell nuclear antigen and nucleolar organizer regions." Virchows Archiv A Pathol.Anat.Histopathol.422. 265-269 (1993)
• [文献書誌] Tatsuo Suzuki: "Characterization of protein kinase C activities in post synaptic density farctions prepared from cerebral cortex,hippocampus,and cerebellum." Brain Res.619. 69-75 (1993)
• [文献書誌] Mitoshi Kunimatsu: "Neutrophil responses induced by formyl and acetyl peptides with the N-terminal sequence of the calpain small subunit." Biochem.Mol.Biol.Int.30. 477-484 (1993)
• [文献書誌] Masanori Takeuchi: "Aberrant production of gliostatin/platelet-derived endothelial cell growth factor(PD-ECGF)in rheumatoid synovium." Arthritis Rheum.発表予定.
• [文献書誌] 佐々木実,国松己歳: "炎症とプロテアーゼ" 現代化学. 22. 256-264 (1993)