研究概要 |
心筋梗塞における補体制御因子の消長を検討するには心筋梗塞発症後から死亡までの時間が各種必要だが、特に短時間で死亡(数時間以内)した症例の検討が重要である。そのため死後時間6時間以内剖検の心臓を研究対象にし、心筋組織の各種の補体活性制御因子、即ち HRF20,Decay Acce lerating Factor(DAF),Membrane Cofactor Protein(MCP)をの免疫組織化学的検討した。その結果、心筋梗塞発症後早期では、HRF20,DAFは壊死心筋細胞に残存していることが判明した。即ち、補体制御因子の心筋細胞からの消失は、心筋壊死の原因ではなく、壊死後の心筋梗塞巣の荒廃を促進する働きを持つことが示唆された。 これを実験的に確認するため、ラットに実験的心筋梗塞を作製して検討した。ラットの冠動脈を結紮して心筋梗塞を作製し、梗塞発生後、どの時点で、梗塞部心筋細胞から補体活性制御因子が消失するかを、免疫組織化学的に検討した。ラットでは抗ラットDAFモノクロナール抗体(512)および抗ラットHRF20モノクロナール抗体(6D1)を使用した。その結果、心筋梗塞発症後3時間でも壊死心筋細胞には上記補体制御因子は残存していた。 以上より、心筋梗塞においては、心筋細胞からの補体制御因子の消失は心筋細胞壊死を誘発するものではなく、細胞死の結果続発的に生ずるのであり、梗塞巣の炎症促進,つまり荒廃を促すと考えられる。 心筋細胞における補体活性制御因子(HRF20およびDAF)の産生および存在様式のin-situ-hybridization法および電顕免疫組織化学法での検討は継続中である。
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