微小細管の蛋白tubulinはニューロンの発生・分化過程で著しい変化を受けることが知られている。神経に特異的なClassIIIβ isotype tubulinに対するモノクローナル抗体TuJlを用い、神経内分泌細胞の性格を有する人の種々の内分泌腫瘍において、どの程度本isotypeが発現しているかをしらべた。正常下垂体前葉では、TuJlに反応する細胞は極めて少なかったが、61例の下垂体腺種では43例(73%)が反応した。この結果は本tubulin isotypeはneuroectoderm由来の未分化な腫瘍でも強く発現していることがわかった。叉他の内分泌腫瘍では副腎髄質腫瘍100%、甲状腺髄様癌45%、膵内分泌腫瘍30%、カルチノイド25%の発現をみた。神経方向への分化の程度と本isotypeの発現が一致することが示唆された。 ニワトリ孵卵期における鰓後体の本tubulin isotypeの経時的な発現状態をTuJlによる免疫染色でしらべた。孵卵8日で、鰓後体のC細胞の多くが陽性であった。更に鰓後体内の神経線維も陽性であった。孵卵14〜16日では、C細胞内の強い陽性所見が持続した。免疫電顕により、TuJl免疫活性はC細胞の細胞質及び分泌顆粒に認められた。胎生後期において、C細胞のTuJl免疫活性は減少しはじめ、10日目のひよこでは、ほとんど消失し、神経細胞のみに限られるようになった。 本tubulin isotypeが、神経ニューロンの微小細管に局在することは、クリオミクロトームにより作成した標本にTuJl抗体を反応させ電顕観察することにより、判明したが、他のニューロン内のマトリックスにも局在するか否かは決定できなかった。 ニワトリの頚動脈体の発生過程で、本isotype陽性細胞は迷走神経遠位神経節から移動し、頚動脈体内に入り、胎生9〜12日の間陽性細胞が増加し続け、以後減少することがわかった。
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