当研究室では形態と形質発現に関する情報を1:1の対応を持って検討することの出来る組織のパラフィン包埋法を開発し、AMeX包埋法と命名した。この方法を病理検査室へ導入すべく、包埋ロータリーを用いて自動的にAMeX包埋を行うための諸条件を検討することを目的とした。その結果、組織を4℃アセトンで1日から1週間ほど固定した後、組織包埋ロータリーでアセトンを4槽、安息香酸メチルを2槽、キシレンを2槽、硬パラフィンを4槽の計12槽をそれぞれ30分ずつ通し、硬パラフィンに包埋するという方法を昨年度に確立した。 今年度は原法のAMeX包埋組織と同様に各種分子生物学的検討が可能かどうかを検討した。方法は-20℃アセトンで1日固定、7日固定、4℃で1日固定、7日固定した後、包埋ロータリーを用いてそれぞれを自動的にAMeX包埋した組織からDNAを抽出し、適当な制限酵素で切断した後、電気泳動してDNAの品質を検査した。対照として、原法のAMeX包埋した組織から抽出したDNAを用いた。原法で包埋した組織から抽出したDNAの品質は新鮮組織のものと変わらないことはすでに証明している。その結果、原法のAMeX法、それぞれの条件下で自動的に包埋した組織から抽出したDNAの電気泳動パターンは全く同じであり、固定の温度、時間を変化させても、包埋ロータリーを用いて包埋してもDNAの品質には変化のないことが証明された。同様に、様々な条件下で包埋した組織から抽出した蛋白を電気泳動したところ、DNAと同様に全て同様の電気泳動パターンを示した。以上より、抗原性の保存に加えて、様々な分子生物学的検討が出来ることが明らかとなった。
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