アルコール依存症(ADS)41剖検例、慢性アルコール中毒(CA)53剖検例、および慢性アルコール性膵炎(CAP)31例について膵線維化の分布を検索した。その結果、膵の線維化はADS41例中30例に、CA53例中20例に、またCAP31例中全例に線維化がみられ、それらは小葉間(PS)と小葉内線維化(IS)に大別された。すなわち、ADSではPS7例、IS23例、CAでは各10例づつであった。また、CAPはいずれも基本的にPS patternを示した。 小葉間線維化はびまん性または散在性に分布し、残された小葉は比較的健常であった。蛋白栓・膵石併存例では小葉内にも線維化が分布するものが多く、また小葉内の線維化の幅が広くなり、最終的に膵組織が線維で置換された。これに対し、小葉内線維化は主として腺房周囲性にびまん性な線維化がみられ、進行例では線維化と腺房の萎縮が増強するものの実質組織が完全に線維に置換されることはなかった。このことより小葉間線維化と小葉内線維化は病態・成因が異なると考えられた。また、前者は慢性アルコール性膵炎臨床診断例に一致し、後者は肝硬変症を併存するものに多かった。 アルコールによる肝硬変と慢性膵炎(線維化)の併存性については議論があり結論が得られていないが、今回、膵の線維化の分布を小葉間と小葉内に分けることにより、前者に肝硬変の併存が少なく、後者に多いという傾向がつかめた。以上より、アルコールによる肝硬変と慢性膵炎は併存が少ないと考えられた。
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