平成5年度はPTHrPレセプターが発現していると考えられる組織あるいは細胞を同定し、PTHrPによる刺激がどのような形で細胞に反映されるかについて検討した。PTHrPはparacrinestimulatorとして機能すると考えられるので、まずPTHrPが発現している組織や細胞を見いだすことにした。PTHrPの発現の有無はmRNAの発現、我々の樹立した抗PTHrPモノクロナル抗体を用いた免疫染色で検索した。この結果、PTHrPレセプターが発現していると考えられたのはヒト副甲状腺、ラット副甲状腺細胞株、リンパ球(Molt 16、Ball 1)、Insulinoma細胞株(RIN)、胎盤であった。ヒト副甲状腺は好酸性細胞にPTHrPの発現がみられた。ヒト副甲状腺では本来のホルモンであるPTHは主細胞で産生されており、PTHrPは主細胞のPTH産生を刺激することが分かった。この刺激はPTHrPのC末端側でみられ、副甲状腺主細胞はPTHrP-Cに対するレセプターを有すると推定された。このPTHrP刺激によって副甲状腺主細胞の細胞内Caイオンが減少することが分かった。ラット副甲状腺細胞株にはPTHrPを産生するクロンとPTHを産生するクロンとがあることが分かった。合成PTHrPに蛍光標識し副甲状腺細胞との結合を調べると、ラット副甲状腺細胞株ではPTHrPのN末端が結合することが分かった。リンパ球ではT細胞にPTHrPの発言が見られた。PHA刺激によってT細胞のPTHrPの発現が増加し、更に細胞内の局在が変化することがわかった。このようにT細胞で発現、増加したPTHrPがB細胞を更に刺激している可能性があるものと推察された。
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