研究申請者は正常組織での副甲状腺ホルモン関連蛋白質の働きを解明することを主たる目的として研究を進めている。今回の研究ではまず細胞内でのPTHrPの分布を知るために、抗PTHrPモノクローナル抗体を作製した。このモノクローナル抗体(MMUN034)は細胞内あるいは組織内のPTHrPの分布を知るための有用な抗体であることが示された。次いでPTHrPの機能を解明するためにふさわしい組織は何であるかを検討した。この結果、副甲状腺とリンパ球が研究対象として適切であることが分かった。副甲状腺についてはヒト手術例を用いた組織学的検討ならびにPrimary cultureによる検討、そしてラット細胞株(PTr)を用いて検討した。その結果、PTHrPは副甲状腺の一部の細胞で産生されること、細胞内での分布は細胞骨格蛋白質の分布と類似していること、PTHrPは細胞外へも放出され、その量は細胞外液中のカルシウムで調節されていることが分かった。また、過形成の様な細胞増殖能の亢進した状況ではPTHrP発現細胞の数が増加することPTHrPの投与によって細胞内のPTHの分布が変化することも分った。以上の様に副甲状腺ではPTHrPは細胞の増殖とPTHの分泌調節に密接に関連していること、PTHrPの放出は細胞外カルシウムによって調節されていることが分った。リンパ球を用いたin situでの検討ではPTHrPはT細胞、B細胞のいずれにも発現していることが分った。PTHrPはPHA刺激を受けたT細胞の偽足様突起に限局して分布していた。T細胞は偽足様突起でB細胞と直接に接する可能性が考えられ、PTHrPは細胞骨格と関連してT細胞、B細胞の相互の情報伝達に係わっている可能性が考えられた。今後は上記の副甲状腺、リンパ球の細胞索を用い、PTHrPレセプターに対応するPTHrPの部分を決定し、レセプターを明らかにする予定である。
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