研究概要 |
ヒト皮膚由来角化細胞株HaCatや重層扁平上皮癌細胞株HSC-4,A431などの培養上清中に、マウス皮膚角化細胞株Balb/MKに対する増殖抑制活性を認めた。これまでこの上清中に2種の角化細胞増殖抑制因子、TGF-βとinsulin-like growth factor binding protein-6(IGFBP-6)を同定していたが、粗な培養上清中の活性と精製されたTGF-βならびにIGFBP-6の生化学的特性の違いから、この培養上清中の主な角化細胞増殖抑制因子はTGF-βともIGFBP-6とも異なることが示唆された。今年度は第三の因子を精製することを本研究の第一目的とした。種々の検討から、本因子は中性領域では非常に不安定で弱酸性領域で比較的安定であること、塩濃度が高くなると失活すること、疎水性が高く水溶液中では容易に重合体を形成することなどが判明してきた。回転培養器を用いてHSC-4細胞を大量培養し、その培養上清を得た。精製の第一段階としてQAE-sephadexカラムによるイオン交換クロマトグラフィーを行い、溶出にはpH勾配を用いた。続いてMonoQカラムによるイオン交換クロマトグラフィー、Superose12カラムによるゲル濾過クロマトグラフィーを行った。活性分画には蛋白成分として、p12,p16と高分子量の複合体分子が含まれている。現在、これらの分子の部分アミノ酸配列の解析を行っており、その結果によってcDNAのクローニングと特異抗体の作製を行う予定である。
|