研究概要 |
ヒト皮膚由来角化細胞株HaCatや重層扁平上皮癌細胞株HSC-4などの無血清培養上清中に、HaCat細胞やマウス皮膚角化細胞株Balb/MKに対する増殖抑制活性を認めた。これまで、この上清中に2種類の角化細胞増殖抑制因子、TGF-βとinsulin-like growth factor binding protein-6(IGFBP-6)を同定しているが、粗な培養上清中の活性と精製されたTGF-βならびにIGFBP-6の生化学的特性の違いから、この培養上清中の主な角化細胞増殖抑制因子は前2者とは異なることが示唆された。この活性分子はBioRex70,QAEsephadexのイオン交換カラムクロマトグラフィーとSuperose12ゲルろ過カラムクロマトグラフィーによって部分精製された。部分精製された活性分子は角化細胞株に増殖抑制活性を示したが、血管内皮細胞HUVECやヒト線維芽細胞株Flow7000への増殖抑制活性は弱く細胞特異性を有することが示された。また、扁平上皮癌細胞株は、調べた限りにおいて反応性の低いものが多く、癌化にともなって、この因子に対する耐性を獲得する可能性も示唆された。この因子は非常に不安定でその完全な精製は困難であったため、いまだ精製は完全ではないが、この因子の増殖抑制活性を中和する活性を指標にモノクローン抗体の作製を試みることに予定を変更した。現在、ハイブリドーマのスクリーニングを進めているところである。抗体が得られたらウェスタンブロット法と免疫沈降法による活性分子の同定とエクスプレッションクローニングを行う予定である。
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