研究課題/領域番号 |
05670192
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
春日井 務 大阪大学, 医学部, 助手 (80214310)
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研究分担者 |
北村 幸彦 大阪大学, 医学部, 教授 (70028520)
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キーワード | Ws / Wsラット / c-kitレセプター / 高親和性IgEレセプター(FcεRI) / ヒスタミン / W / W^vマウス / CFU-Mast / Nippostrongylus brasiliensis |
研究概要 |
1.Ws/Wsラットは我々の研究室で発見した世界で最初の遺伝的マスト細胞欠損ラットである。Ws遺伝子座はレセプター・タイロシンカイネースの一種であるc-kitレセプターをコードしており、Ws/Wsラットではc-kit遺伝子に12塩基の欠失があるためカイネース活性が障害されている。Ws/Wsラットの組織をアルシアンブルーで染色してもマスト細胞は見つからない。しかしアルシアンブルーが結合するのはプロテオグリカンであり、プロテオグリカンを充分に含んでいない幼弱なマスト細胞はWs/Wsラットの組織にも存在する可能性がある。そこで、マスト細胞の分化過程でプロテオグリカンの合成より早期に発現することがわかっている高親和性IgEレセプター(FcεRI)およびc-kitレセプターと、より高感度で検出できるヒスタミンを分化マーカーとし、それぞれの定量を行なった。その結果、Ws/Wsラットの皮膚のヒスタミン含量は+/+ラットの約0.3%であり、これはWs/Wsラットの皮膚のマスト細胞数が+/+ラットの0.3%であることと一致した。さらに、Ws/Wsラットの皮膚および胃ではFcεRIおよびc-kitのmRNAはほとんど発現しておらず、in situハイブリダイゼーションによってもFcεRIおよびc-kitのmRNAを発現する細胞は検出できなかった。以上のことにより、Ws/Wsラットは成熟したマスト細胞に加えマスト細胞へと分化を方向づけられた幼弱なマスト細胞も欠損すると考えられた。 2.マウスのc-kit遺伝子座に2個の突然変異遺伝子をもつW/W^vマウスはWs/Wsラット同様マスト細胞を欠損するが、W/W^vマウスの骨髄及び血液中にはメチルセルロース中でマスト細胞コロニーを形成する前駆細胞(CFU-Mast)が正常(+/+)マウスと同程度存在している。血液および組織の採取には大型であるラットの方がマウスよりはるかに適しており、同一個体の経時的観察も可能である。本研究の目的の一つであるWs/Wsと+/+ラットの血液及び組織中のCFU-Mast数の測定は現在進行中であり、平成6年度は消化管寄生虫であるNippostrongylus brasiliensis感染にともなう各種臓器におけるCFU-Mastの動態を中心に実験を遂行する予定である。
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