1.エラスターゼ産生緑膿菌株と非産生株の何れか10^9個をフィブリン塊に包んでモルモット腹腔内に接種して急性腹膜炎を発生させたところ、何れの場合も菌接種2時間目頃より血中エンドトキシン濃度が上昇して敗血症に陥った。産生株の場合は、7〜8時間目に死亡したが、主な剖検所見は諸臓器の微小循環系の拡張を中心とした循環障害であり、敗血症性ショック死が疑われた。一方、非産生株では、10〜12時間目に心嚢液貯留による心タンボナーゼで死亡した。 2.頸動脈カテーテル法にて動脈圧を測定しながら、接種後4時間目に、抗モルモットalpha_2マクログロブリン(alpha_2M)ウサギIgGF(ab′)_2を静注してalpha_2Mを除去すると、産生株接種の場合のみ急激なショックを発症して死亡した。 3.alpha_2Mを除去する直前に、緑膿菌エラスターゼの合成阻害剤もしくはヒトalpha_2Mを静注しておくと、このショックは阻止された。 alpha_2Mを除去する直前に、抗モルモットハーゲマン因子ウサギIgGF(ab′)_2を静注して流血中のハーゲマン因子を除去しおいた場合にも、このショックは惹起されなかった。 以上の結果は、【.encircled1.】少なくともこのモデルにおける敗血症性ショックが、緑膿菌が分泌するエラスターゼによるハーゲマン因子・カリクレイン・キニン系(血漿キニン系)の活性化によって生じること、及び、【.encircled2.】細菌性プロテアーゼに対する血漿インヒビターであるalpha_2Mが、敗血症性ショック阻止に不可欠な役割を果たしていることを示しており、本研究プロジェクトの目的は、ほぼ達成されたと考えられる。
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